会員紹介
ラ・ピッツェリア
群馬県前橋市にあるラ・ピッツェリアでは、店内で焼き上げるナポリピッツァが人気です。ふっくらと焼きあがったピザ生地は、パリッとしてモチモチ! 何枚でも食べたくなるおいしさで、店内はいつも大勢のお客様でいっぱいです。
そんな同店を運営する株式会社ガンジョーネは、ピッツァ窯やパン窯などの製造・販売を手掛けており、日本全国はもちろん、海外のピッツァリアにも窯を提供しています。窯を知り尽くし、おいしいピザの製法についても研究し続ける代表取締役・増田晋一さんは、国産小麦に大きな期待を寄せています。
おいしいピザを追求し続けるラ・ピッツェリア
重厚な煉瓦造りの建物に足を踏み入れると、高い天井を支える天然木の梁、アンティークな風合いをほどこされた天然木のイスとテーブル、煉瓦の壁などが醸し出す、あたたかみのある落ち着いた雰囲気に包まれます。同店では、最奥に鎮座する自社製ピッツァ窯で、25種以上のピザを焼き上げます。
「ラ・ピッツェリアは、私たちにとってはモデル店舗でもあります。10年前、ピッツァ窯の製造・販売をスタートさせるにあたり、『本当にピッツェリアの経営が成り立つのか』と疑問視する声もありました。それでも、おいしいピッツァがあれば必ず店は流行るはず。そう考え、ピッツァ窯の改良開発、そしておいしいピッツァの作り方を研究するために、ラ・ピッツェリアと研修センターを作ったのです」(増田さん)
店舗に隣接した研修センターでは、ピッツァ窯やパン窯を導入予定のピッツァ職人に、窯に適したピザの作り方を研修するほか、県内にある調理師学校と提携し、学生に対してピザやパンの指導をしているそうです。
「研修センターでは、必ずピザ職人や学生の方々の出身地の『地粉』に触れてもらっています。ピザ=イタリアだからと、イタリア産がおいしいかといえば、そうではないのです。その土地との水との親和性が、ピザのおいしさを左右するのです」(増田さん)
おいしいピッツァを作るには、その土地の粉と水が一番
ピッツァ窯の製造・販売のために、みずからおいしいピザの作り方を研究しているという増田さん。水分を逃さず、生地の円周がふっくらパリッとモチモチに焼き上がるには、ナポリピッツァの場合は、窯で炉床温度450℃、1分が目安だそうです。
「温度が強すぎると、水分が逃げすぎて口当たりがバサバサした生地になる。そこで当社の窯は、ピッツァを焼くのに最適な輻射熱が炉内から発する材料を使用しています。ただ、おいしさの基本は小麦粉。輸入小麦100%ではなく、ほどよく国産小麦がブレンドされた粉の方が、おいしく焼き上がることがわかり始めているんですよ」(増田さん)
研修センターでは、国産小麦ゆめかおり100%のピッツァや生パスタも試作されていました。十二分においしく、もちもちとした歯触りが楽しめます。
「イタリアのおいしいピザは、その土地の小麦粉、水を使って作られています。日本に輸入されれば『イタリア産小麦粉』ですが、彼らにとっては『地粉』なのです。同じように、日本でもその土地の小麦粉、水を使ったピザを作るべき。だから地産地消を奨励する『麦わらぼうしの会』の取り組みは、私たちが研修センターでピザ職人や学生の方々に伝えていることと、ほぼ同義だといえます」(増田さん)
香りも味も、お客様の満足度も、国産小麦のほうが上
生産者も参画する「麦わらぼうしの会」の取り組みを前提に、ラ・ピッツェリアのシェフであり研修センターでの指導を任されている森田勝さんは、「日本の農業が健全でなければ、私たちの仕事は成り立ちません」と続けます。
「おいしい素材を作ってくれる農家、そして自然に感謝することで、私たちは気持ちよく仕事ができるのです。ただ、欧米諸国に比べ日本は国土が狭く、小麦の作付面積はとても小さい。小さな農家が農業に取り組めるような環境を守らなければ、このままでは国産小麦はもちろん、日本の農業が失われてしまいかねません。私は、国産小麦を守りたい」(森田さん)
しかし、外食産業で使用されるのは輸入小麦が主流です。そんな現状に対し、増田さんはこう話します。
「形状や価格面で国産小麦は敬遠されがちですが、味、香りについては、むしろ国産小麦のほうが質はいい。おいしいものを作れば、輸入小麦より国産小麦のほうがお客様の満足度も高くなるでしょう。『麦わらぼうしの会』とともに、おいししピッツァづくりに適した小麦粉作りを模索し、広めていきたいですね」(増田さん)