会員紹介
浅野屋
軽井沢に3店、首都圏に7店舗を構える「浅野屋」は、1933(昭和8)年創業の老舗ベーカリーです。伝統的な製法のパン作りを継承し続けており、どれだけ時代が変わっても“浅野屋らしい”おいしいパンは、多くのお客様に支持されています。
軽井沢に店を構える縁で、長野県の生産者とのつながりがある同店では、信州の食材を使った商品開発に取り組んでいるそうです。おいしさにこだわりつつ、野菜、くだもの、そして小麦粉についても、地産地消に力を入れています。
80年以上も愛され続ける、浅野屋のパン
ヴァイツェンミッシュブロートにパン・ド・カンパーニュ、フルーツライ――浅野屋の定番人気商品の多くは、ハード系のヨーロピアンブレッドです。
「本格的なヨーロピアンブレッドを日本に広めたいという想いを抱いていた先代は、日本で初めてスペイン製ファルファス社の石窯を設置しました。それもあり、当店の商品はハード系のパンがメインで、今も昔もそれは変わりません。なぜなら、特に軽井沢の店にご来店くださるお客様の多くが、多くても年に1回、2回あるいは数年に1回、『以前来店したときに食べた、あのパンが食べたくて』とおっしゃるからです。そのお気持ちに応えるために、私たちはオーソドックスな昔ながらのパンを、今も作り続けているのです」(シェフ ブーランジェ 平 和生さん)
同社の商品コンセプトは、“本当においしいものを”。本格的なヨーロピアンブレッドのおいしさをお客様にわかっていただける商品を作り上げるために、パンによっては地産地消にこだわり、信州の食材を使っているそうです。
もっちりしっとりと焼き上がる、国産小麦
浅野屋では、パン・ド・ミや一部ハード系で国産小麦――軽井沢の店舗では信州産、首都圏の店舗では北海道産を使用しています。
「どこの産地のものでも、いいものはいい。おいしいものを作り上げるのに、適したおいしい食材を使うのは当然です。ただ、国産のものは生産者の顔が見え、安心です。何より国産には、輸入品にはない、大きな魅力があるのです」(平さん)
国産小麦と輸入小麦の違いについて、パンの作り手でもある平さんは、こう続けます。
「外麦のほうがパンを作りやすいとは思いますが、パンの種類によっては、外麦がベストということでもないのです。国産小麦を使ったパンは、外はパリッと、内層はもっちりしっとりとした仕上がりになる。その特徴をいかせるパンなら、国産小麦のほうが外麦よりおいしいんですよ」
さらに大きな可能性が、国産小麦にはあるようです。小麦は、米やそばと同類の穀類に分類されます。米やそばについては、「新米」「新そば」が高く評価されているように、味わいと香りに「とれたて」のおいしさがあることが知られています。小麦も、とれたてのおいしさがあると考えられると、平さんは考えています。
いつか「とれたて、ひきたて、焼き立て」を
「収穫したての小麦は、輸入品では入ってきません。船で、製粉会社で、何カ月も寝かされたものしか入荷しないからです。ところが国産ならば、早ければ8月には、乾燥をへた小麦が入手できる。それを自家製粉すれば、とれたて、ひきたて、焼き立てのパンができるわけです。小麦本来のおいしさ、その価値を、パンを通してお客様に知っていただくためにも、今後の事業として着手していきたいと考えています。」(平さん)
国産小麦の普及に取り組む麦わらぼうしの会の活動は、地産地消に力を入れる浅野屋と重なる部分が多いと、平さんはいいます。
「国産小麦に限らず、国産農作物の普及について私たちにできることがあれば、麦わらぼうしの会に協力を惜しまず、お手伝いしたいと思っています。できることなら、国産小麦と輸入小麦との価格差がもう少し解消されれば、もっともっと国産小麦の普及スピードは速まるはずです。小麦の価格が3〜4割高いからといって、おいしいからパンの値段が3〜4割増でも買うという消費者は、多くないのが現実。安いのがいいという意味ではなく、生産者も納得する適切な価格になってほしいと、切に願っています」(平さん)